アンカーの種類
あと施工アンカーには「金属系アンカー」「接着系アンカー」「その他のアンカー」と大きく分けて3種類あり、固着させる方法が異なります。そして、アンカーの施工方法にも種類があり、「打ち込み式」「締め付け式」「ねじ固定式」などが存在します。「打ち込み式」はアンカー本体を打ち込み固定させるアンカーを指します。次に「締め付け式」はトルクレンチなどを使用し、締め付けて仕上げるアンカー、「ねじ固定式」はインパクトドライバーを使用して打ち込むアンカーを指します。
アンカーの耐力が低下!?
アンカーを打ち付けるコンクリートは、水とセメントの水和反応によって時間をかけて強度を上げていきます。水が供給され続ければ水和反応は進行し、時間経過と共にコンクリートの強度は増していきます。この水和反応を進行している日数を「材齢」といいます。コンクリートの強度は材齢28日を基準に考えることが多いです。そして水和反応は温度が高いほど活発になるので温度もとても重要な役割を果たしています。
しかし、強度のあるコンクリートでも作用荷重によりひび割れが発生することがあります。あと施工アンカーは特にコンクリートのひび割れに影響するのです。コンクリートのひび割れはアンカー設置箇所を通って発生するため、アンカーの耐力に大きく影響します。コンクリートにとって無害なひび割れ幅であっても、あと施工アンカーの性能や耐久性に悪影響を及ぼす可能性があるのです。ひび割れによりアンカーにとって重要な付着力や摩擦力などの固着力が低下し、抜け破壊が発生し破壊耐力は低下します。研究結果によるとアンカーの位置にひび割れ幅0.3mm~0.4mmのひび割れが発生した場合、アンカーの性能は、ひび割れの発生がない場合の耐力の50%〜70%となります。
このようなことからなるべくひび割れをさせないアンカーを選び使用することが好ましいのです。
オールアンカーではひび割れしやすい?
コンクリート用のアンカーと言えば「オールアンカー」を使用される施工業者も多いのではないでしょうか。オールアンカーは別名「芯棒打ち込み式アンカー」と呼ばれており、名前の通り芯棒を打ち込んで固着させるアンカーのことです。オールアンカーの特徴は、ハンマーなどを使用し芯棒を打ち込むと芯棒が頂部まで到着し拡張部が開くところです。オールアンカーが拡張されることによってコンクリートの壁に食い込み固着させるのです。
使用方法は、所定の位置に、決められたドリル径のドリルを使用し穿孔します。その時にコンクリート切粉が出てくるので、ダストポンプや集塵機などを使用し穴の中の切粉を掃除します。綺麗になった穴にオールアンカーを差し込んで芯棒をハンマーで叩きながら打ち込んでいきます。オールアンカーの拡張部が開き固着されたのを確認したら、最後にナットを締めて取付完了です。
しかし、このオールアンカーの大きな特徴の拡張部の開脚の衝撃などによりコンクリートにひびが割れやすくなるのです。そのため、ひびが入りやすい隅部での施工ができないという欠点があります。
最新コンクリート用アンカー「タップスター」
このようなコンクリートのひび割れリスクを軽減させたのが、日本パワーファスニングの「タップスター」です。こちらはコンクリート用ねじ固定式アンカーであり、オールアンカーとの施工方法が異なります。
タップスターの使用方法は、まず所定の位置に指定の大きさのドリルで穿孔していきます。その際、タップスターを埋め込む深さより10mm程度深めにあける必要があるので、作業前にドリルにテープなどでマーキングしておきます。ドリルで穴をあけたら、コンクリートの切粉が出てくるので、ダストポンプや集塵機で切粉を除去します。次にインパクトドライバーでタップスター専用のソケットを装着します。ドリルであけた穴にタップスターを挿しこみ、専用ソケットを装着させたインパクトドライバーで埋め込み深さまでねじ込みます。そして最後にナットで取り付け物を固定して完了です。
では、どうしてコンクリート用ねじ固定式アンカー「タップスター」はコンクリートのひび割れリスクを軽減させることができるのでしょうか。
まず一つ目の理由にタップスターはオールアンカーのように拡張しないからです。オールアンカーの拡張部の開脚がコンクリートに衝撃を与えます。コンクリートの端からオールアンカーを打ち込む距離が不足している場合、コンクリートを打ち込んでいくと衝撃によりひび割れしてしまう可能性があります。また、コンクリートの強度によってもヒビが入りやすいのです。もちろんタップスターにも同じようなリスクはあるものの、オールアンカーと比較すると、タップスターはねじの形をしており拡張することはなく、一定方向に力を入れるのでひび割れしにくいのです。
次の理由にタップスターがオールアンカーより細いということです。コンクリートの強度や固定させる長さによりサイズを変えて施工されますが、同じコンクリート強度と埋め込み長さのオールアンカーとタップスターのサイズを表したものになります。
上記の表はコンクリートの強度が24N/㎟時のアンカーを比較したものです。コンクリートにひびが入ってしまう原因に穿孔時の穴の大きさがあります。ドリルで大きな穴をあける際、コンクリートの抵抗力が強く力を入れて穿孔しなくてはなりません。そのため、コンクリートにも衝撃が与えられて割れてしまうのです。そして上の表を見てわかる通り、タップスターの外径はオールアンカーに比べて3.4mm細くなっています。そのため使用されるドリル径ももちろん異なり、A社のオールアンカーは17.0mmに対して、タップスターは11.0mmと6mmも違うのです。(※A社と比較しましたが、メーカーごとにサイズが異なりますので、タップスターより細いオールアンカーがある可能性はあります。使用用途をご確認の上アンカーを選択し使用してください。)
熟練された経験は不要!
そしてタップスターはコンクリートのヒビ割れリスクが軽減されるだけではなく、誰でも同じクオリティーで施工することが可能なのです。
なぜなら、インパクトドライバーを使用して取り付けるだけだからです。コンクリート用によく使用されるオールアンカーは芯棒を打ち込むことにより、頂部が拡張されてコンクリートとオールアンカーを固着させます。しかし、芯棒を打ち込む際に、ハンマーが垂直になっていないと芯棒が曲がってしまうことがあります。芯棒が曲がってしまうと芯棒が頂部まで達していないので拡張部は開脚せず、しっかり固着されていないのです。しかし、タップスターは芯棒がなく、ねじ固定式でコンクリート下穴の壁にアンカー自身のねじ山を食い込ませ固定させるため、初心者でも確実に施工をすることが可能なのです。
そして、なんといってもインパクトドライバーを使用することによって断然施工スピードが早くなります。また、力作業の場合大変だった上向き施工やひび割れしやすい隅部での施工もできるので、さまざまな場所で使用することができます。
コンクリート用ねじ固定式アンカー「タップスター」の寸法・施工使用
タップスターはステンレス製のそのほかにも鋼製があり用途によって使い分けていただくことができます。
そのほかにも新しく「タップスターM16」も開発され、ドリル径が15.0と従来のオールアンカーより2mm細く、コンクリートの抵抗力が弱まるので穿孔スピードが上がり、施工効率をアップさせます。「タップスターM16」でも端部や仕上げ材が割れにくいメリットもありますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。